2013年04月16日
バイクの楽しみ方【秘密会員制:大人のバイク倶楽部】
極限のスピード域でのロングツーリング後の温泉というのは実に心地よい。
自由のためにバイクに乗っているのに超高速域となると全神経と全筋肉に緊張が走りアドレナリンが分泌され、リフレッシュどころか信じられないくらいの緊張を強いられる。
この超緊張感から開放された心と体というのは、スポーツの後の清々しさに似ていて、それでも中年オヤジのサガでグッタリとなってしまう。その上、温泉につかったもんじゃから、まさに身も心もトロトロにとろけてしまった・
そんなトロトロにとろけた状態でビールを飲むというのは、砂漠に水をまくようなもので、グイグイと飲むにもかかわらずお腹に溜まる気配はなく、五臓六腑に染み渡り、思わず出る言葉は「うめぇぇぇぇ~っ、生中おかわりっ!」じゃ。
美味しい料理にアルコールと至福の時間を過ごしていたわけだが、ちょっと外の空気を吸いたくなり庭に出て夜風に吹かれていたら、どこからともなくボコボコボコッという単気筒エンジン特有の音を響かせて1台のバイクがやってきた。
夜だったのでなんというバイクかは分からなかったが、オフロードタイプのバイクということだけは分かった。
いかにも疲れきったという、ぎこちない動きでそのライダーはバイクを降り、荷物をひきずるように持ち抱えてこっちの方に歩いてきた。
庭の照明に入り、くっきりとライダーの姿が映し出された。
あれっ? どこかで見た感じだなぁ・・・・
あっ
2mほどに近づいたところで、はっきりと顔を確認することができた。
「ハウトさんじゃない。」思わず私は声をかけてしまった。
誰がどう見たってハウトさんなのだ。
「ハウト・・・・?何それ・・・。」
と、怪訝な表情で私に応えた。
「あぁ、すみません。人違いみたいでした。」と私。
と返してはみたものの、やっぱりハウトさんにしか見えないんだよね。
でも、考えてみれば奈良に住んでいるハウトさんがこんな所にいるわけないし、他人の空似ということなんでしょう。
それにしても、よく似てるなぁと思っていたところに、やはり庭に出てきていた荒井さんが
「よぅ、随分と遅いなぁ、みんなできあがってるぜ。」
すると、ハウトさん似のライダーは
「なんだよ、その言い方はっ。」
「みんな出来上がってるって、ふざけんなよ。」
「俺ひとり置いていくなんてひどいじゃないか。」
荒井さんは気に留める様子もなく「ごめんごめん、まあ一緒に飲もうや。」
と笑いながら部屋へときびすを返した。
ハウトさん似のライダーは肩を震わせながら
「もう二度とお前らとは走らねぇ、
バイクっていうのはただ早く走りゃいいってもんじゃねえんだよ。
バイクっていうのはなぁ、バイクっていうのは・・・・。」
それからは声になっていなかった。
泣いているんだろうか・・・・?
いや、泣いてはいない。
声は出ていないのに、そのライダーは確かに何かしゃべっていた。
いや違うなぁ。
口は動いていない。
でも、何かしゃべっていた。
そう、私にはそのライダーの心の声が聞こえたんだよ。
彼はこう言っていた。
なんて下品なやつらなんだ・・・・。
本当のバイクの楽しみ方を全く分かってないやつらだ。
成金家庭に生まれた、我がままし放題のクソガキと一緒じゃねぇか。
制限速度を守れとは言わないが、お前たちがやってることは滅茶苦茶だろ。
あんな無茶なスピードじゃ、自己責任だけじゃすまないんだぞ。
お前たちだけじゃなく、周りに必ず迷惑がかかるんだよ。
そう心の中で叫んだかと思うと、今度は物思いにふけるように何かを思い出している様子だ。
どうやら先週行った奥飛騨の林道ツーリングを思い出しているらしい。

進入禁止のゲートを潜り抜け、荒れ果てたダート道を細心の注意を払いながら走り抜ける。
地図にも載っていないような古びたトンネルを潜り抜ける、誰も見たことがないような
奇跡的な自然の絶景に酔いしれる。
空気が美味しい。鳥のさえずりが心地いい。
しばらく走ると小川のせせらぎが聞こえてきた。
バイクを降りて、マグカップに沢の水をくんで飲み干す。
なんて美味しい水なんだ。
喉を落ちる水はキリッと冷たいのに、胸の奥がフーッと暖かくなる感覚。
不思議と涙が流れてくる。
別に悲しいわけじゃない。
悲しいどころか、これは感謝の涙なんだ。
こうして生きていること、平和な日本で暮らせていること。
そして何より、こんな経験ができる地球そのものに感謝なんだよ。
ほんの一瞬のことだったのに、私にはこんな風に彼がしゃべったように思えた。
でも、現実に私の耳に聞こえた台詞は
「もう二度とこんなやつらとツーリングには来ない。
あいつら、バイクの本当の楽しみ方をなにもわかっちゃいないんだ。」と
同じバイクを愛するにしても、あまりにも明暗がハッキリとした瞬間を見てしまった私だ。
出来ることなら、双方が歩み寄って仲直りしてほしいと思う。
実を言うと、このバイク倶楽部のツーリングはこれが最初で最後。
そう、つまりあれから私はこの倶楽部のツーリングには参加していない。
私はどちらが正しくて、どちらかが間違ってるとは考えていない。
人間って誰しもが不完全だと思っちょる。
多くの場合、一人の行動や言動を厳密に分析すれば、間違いだらけ・矛盾だらけなばすじゃ。
自慢じゃないが私なんざぁ、煩悩と我欲の塊のような人間で恥ずかしいことこの上ない人生を送っちょる。
だから、人の批判や批評をするような立場でもないし、そんな気もサラサラない。
だけど、いろんな人との出会いで、そして経験で学ぶことはたくさんあるんだよね。
何をどう学び、どう解釈してどう活かすかは本人次第。
そう私次第というわけじゃ。
そして、あなた次第というわけじゃよ。
完
追伸: こんな長い日記、最後まで読んでいただきお疲れ様、そして、ありがとうございました。
追伸2: という夢を見ました・・・・♪
もうお気づきの方も多いと思いますが、【秘密会員制:大人のバイク倶楽部】は
私が見た夢の話です。
あくまで日本は法治国家。
ルールはきちんと守りましょうねっ・・・・♪
自由のためにバイクに乗っているのに超高速域となると全神経と全筋肉に緊張が走りアドレナリンが分泌され、リフレッシュどころか信じられないくらいの緊張を強いられる。
この超緊張感から開放された心と体というのは、スポーツの後の清々しさに似ていて、それでも中年オヤジのサガでグッタリとなってしまう。その上、温泉につかったもんじゃから、まさに身も心もトロトロにとろけてしまった・
そんなトロトロにとろけた状態でビールを飲むというのは、砂漠に水をまくようなもので、グイグイと飲むにもかかわらずお腹に溜まる気配はなく、五臓六腑に染み渡り、思わず出る言葉は「うめぇぇぇぇ~っ、生中おかわりっ!」じゃ。
美味しい料理にアルコールと至福の時間を過ごしていたわけだが、ちょっと外の空気を吸いたくなり庭に出て夜風に吹かれていたら、どこからともなくボコボコボコッという単気筒エンジン特有の音を響かせて1台のバイクがやってきた。
夜だったのでなんというバイクかは分からなかったが、オフロードタイプのバイクということだけは分かった。
いかにも疲れきったという、ぎこちない動きでそのライダーはバイクを降り、荷物をひきずるように持ち抱えてこっちの方に歩いてきた。
庭の照明に入り、くっきりとライダーの姿が映し出された。
あれっ? どこかで見た感じだなぁ・・・・
あっ
2mほどに近づいたところで、はっきりと顔を確認することができた。
「ハウトさんじゃない。」思わず私は声をかけてしまった。
誰がどう見たってハウトさんなのだ。
「ハウト・・・・?何それ・・・。」
と、怪訝な表情で私に応えた。
「あぁ、すみません。人違いみたいでした。」と私。
と返してはみたものの、やっぱりハウトさんにしか見えないんだよね。
でも、考えてみれば奈良に住んでいるハウトさんがこんな所にいるわけないし、他人の空似ということなんでしょう。
それにしても、よく似てるなぁと思っていたところに、やはり庭に出てきていた荒井さんが
「よぅ、随分と遅いなぁ、みんなできあがってるぜ。」
すると、ハウトさん似のライダーは
「なんだよ、その言い方はっ。」
「みんな出来上がってるって、ふざけんなよ。」
「俺ひとり置いていくなんてひどいじゃないか。」
荒井さんは気に留める様子もなく「ごめんごめん、まあ一緒に飲もうや。」
と笑いながら部屋へときびすを返した。
ハウトさん似のライダーは肩を震わせながら
「もう二度とお前らとは走らねぇ、
バイクっていうのはただ早く走りゃいいってもんじゃねえんだよ。
バイクっていうのはなぁ、バイクっていうのは・・・・。」
それからは声になっていなかった。
泣いているんだろうか・・・・?
いや、泣いてはいない。
声は出ていないのに、そのライダーは確かに何かしゃべっていた。
いや違うなぁ。
口は動いていない。
でも、何かしゃべっていた。
そう、私にはそのライダーの心の声が聞こえたんだよ。
彼はこう言っていた。
なんて下品なやつらなんだ・・・・。
本当のバイクの楽しみ方を全く分かってないやつらだ。
成金家庭に生まれた、我がままし放題のクソガキと一緒じゃねぇか。
制限速度を守れとは言わないが、お前たちがやってることは滅茶苦茶だろ。
あんな無茶なスピードじゃ、自己責任だけじゃすまないんだぞ。
お前たちだけじゃなく、周りに必ず迷惑がかかるんだよ。
そう心の中で叫んだかと思うと、今度は物思いにふけるように何かを思い出している様子だ。
どうやら先週行った奥飛騨の林道ツーリングを思い出しているらしい。
進入禁止のゲートを潜り抜け、荒れ果てたダート道を細心の注意を払いながら走り抜ける。
地図にも載っていないような古びたトンネルを潜り抜ける、誰も見たことがないような
奇跡的な自然の絶景に酔いしれる。
空気が美味しい。鳥のさえずりが心地いい。
しばらく走ると小川のせせらぎが聞こえてきた。
バイクを降りて、マグカップに沢の水をくんで飲み干す。
なんて美味しい水なんだ。
喉を落ちる水はキリッと冷たいのに、胸の奥がフーッと暖かくなる感覚。
不思議と涙が流れてくる。
別に悲しいわけじゃない。
悲しいどころか、これは感謝の涙なんだ。
こうして生きていること、平和な日本で暮らせていること。
そして何より、こんな経験ができる地球そのものに感謝なんだよ。
ほんの一瞬のことだったのに、私にはこんな風に彼がしゃべったように思えた。
でも、現実に私の耳に聞こえた台詞は
「もう二度とこんなやつらとツーリングには来ない。
あいつら、バイクの本当の楽しみ方をなにもわかっちゃいないんだ。」と
同じバイクを愛するにしても、あまりにも明暗がハッキリとした瞬間を見てしまった私だ。
出来ることなら、双方が歩み寄って仲直りしてほしいと思う。
実を言うと、このバイク倶楽部のツーリングはこれが最初で最後。
そう、つまりあれから私はこの倶楽部のツーリングには参加していない。
私はどちらが正しくて、どちらかが間違ってるとは考えていない。
人間って誰しもが不完全だと思っちょる。
多くの場合、一人の行動や言動を厳密に分析すれば、間違いだらけ・矛盾だらけなばすじゃ。
自慢じゃないが私なんざぁ、煩悩と我欲の塊のような人間で恥ずかしいことこの上ない人生を送っちょる。
だから、人の批判や批評をするような立場でもないし、そんな気もサラサラない。
だけど、いろんな人との出会いで、そして経験で学ぶことはたくさんあるんだよね。
何をどう学び、どう解釈してどう活かすかは本人次第。
そう私次第というわけじゃ。
そして、あなた次第というわけじゃよ。
完
追伸: こんな長い日記、最後まで読んでいただきお疲れ様、そして、ありがとうございました。
追伸2: という夢を見ました・・・・♪
もうお気づきの方も多いと思いますが、【秘密会員制:大人のバイク倶楽部】は
私が見た夢の話です。
あくまで日本は法治国家。
ルールはきちんと守りましょうねっ・・・・♪
Posted by うっちぃ at 22:27│Comments(10)
│GN125H日記
この記事へのコメント
はじめまして。
倶楽部の、まぁー です
毎度、読みやすい書き方だなぁって
思ってました。
長編記事、何点か共感できたりして
面白ったかったです(^-^)
倶楽部の、まぁー です
毎度、読みやすい書き方だなぁって
思ってました。
長編記事、何点か共感できたりして
面白ったかったです(^-^)
Posted by まぁー at 2013年04月16日 23:20
まぁーさん
はじめまして。
ご丁寧な書込みありがとうございます・・・・♪
はじめまして。
ご丁寧な書込みありがとうございます・・・・♪
Posted by うっちぃ
at 2013年04月17日 07:40

現実なのか架空なのか、とても引き込まれました。
ホントに夢なのww??怪しいなww。
でもバイク乗りはアウトロー的なものへの憧れは少なからずあると思いますよ。
僕も常に「俺を縛り付ける鎖はすべて食いちぎってやるぜ」って首に繋がったロープをはむはむやってます。
今度のキャンプでは焚き火なんかボウボウしちゃって、もうトキトキのアウトローになりたいと思います。でもまだ嫁さんに言い出せないんですよね~。
ホントに夢なのww??怪しいなww。
でもバイク乗りはアウトロー的なものへの憧れは少なからずあると思いますよ。
僕も常に「俺を縛り付ける鎖はすべて食いちぎってやるぜ」って首に繋がったロープをはむはむやってます。
今度のキャンプでは焚き火なんかボウボウしちゃって、もうトキトキのアウトローになりたいと思います。でもまだ嫁さんに言い出せないんですよね~。
Posted by やまちゃん at 2013年04月18日 14:02
はじめまして。
うっちぃさんのブログは開設当初から楽しみに見てたんですけど、初めてコメントさせていただきます。
最後のオチは、やっぱりねぇーっ思いましたよ(笑)
でも、うっちぃさんの日記ってエッセイというか短編小説というか、起承転結がちゃんと出来てるので、読み応えがあって楽しいです。
特に今回のお話は面白かったですよ。いかにも現実っぽくて、どんどん引き込まれました。
バイクのことはよく分からないんですが、私の大好きなブログです。
これからも楽しみしてますねっ。
うっちぃさんのブログは開設当初から楽しみに見てたんですけど、初めてコメントさせていただきます。
最後のオチは、やっぱりねぇーっ思いましたよ(笑)
でも、うっちぃさんの日記ってエッセイというか短編小説というか、起承転結がちゃんと出来てるので、読み応えがあって楽しいです。
特に今回のお話は面白かったですよ。いかにも現実っぽくて、どんどん引き込まれました。
バイクのことはよく分からないんですが、私の大好きなブログです。
これからも楽しみしてますねっ。
Posted by みわこ at 2013年04月18日 16:15
お久しぶり、箕面のpinです。
てっきり現実のことと思い読んじゃいました。
面白い小説をタダで読んだ気分で得した感じです(笑)
ところで昨日、例のバイクセブンに来てませんでしたか?
てっきり現実のことと思い読んじゃいました。
面白い小説をタダで読んだ気分で得した感じです(笑)
ところで昨日、例のバイクセブンに来てませんでしたか?
Posted by pin at 2013年04月18日 22:20
やまちゃん
お~、やまちゃん
今度のキャンプでは久しぶりにお会いできますね。
楽しくみんなで盛り上がりましょう~・・・・♪
お~、やまちゃん
今度のキャンプでは久しぶりにお会いできますね。
楽しくみんなで盛り上がりましょう~・・・・♪
Posted by うっちぃ
at 2013年04月19日 08:55

みわこさん
はじめまして、コメントいただきありがとうございます。
そんなに褒められると照れちゃいますが
こちらこそ、よろしくねっ・・・・♪
はじめまして、コメントいただきありがとうございます。
そんなに褒められると照れちゃいますが
こちらこそ、よろしくねっ・・・・♪
Posted by うっちぃ
at 2013年04月19日 08:56

pinさん
ギョエッ
見られてましたか・・・・・♪(笑)
ギョエッ
見られてましたか・・・・・♪(笑)
Posted by うっちぃ
at 2013年04月19日 08:57

そーですか!最後?夢?ですか?
ですよね!佐野ー松島間、1時間半は、無いですよね!(ふ・つ・う!)
それにしても、昔を思い出しながら楽しませてもらいました。
では、全ミーで!
ですよね!佐野ー松島間、1時間半は、無いですよね!(ふ・つ・う!)
それにしても、昔を思い出しながら楽しませてもらいました。
では、全ミーで!
Posted by トモジイ at 2013年04月19日 09:41
トモジイさん
あははっ、夢ですよ夢っ。
でも夢に登場してくる荒井さんとかオフロードライダーって
現実にいそうでしょ・・・・♪(笑)
あははっ、夢ですよ夢っ。
でも夢に登場してくる荒井さんとかオフロードライダーって
現実にいそうでしょ・・・・♪(笑)
Posted by うっちぃ
at 2013年04月20日 07:14
